以下コンテンツでは、よりご理解を深めていただくために実際の痔の症例写真を提示しております。
疾患の性質上、ご不快にさせる可能性がありますので苦手な方はご覧にならないようご注意ください。
痔核(イボ痔)の治療方法の選択肢
痔は「がん」などの疾患に比べると生命予後に対する影響が少ないため、大病院では軽んじられる傾向にあります。しかしながら「排便」という日々の生活習慣の中で、痔があるという不快感は患者さん本人しか分からず、また患者さんによっても訴えは様々です。そのため痔の治療法というのは、がん治療法のようにガイドラインに沿った標準化されたものでなく、個別に細かく対応する事が必要です。
(※日本大腸肛門病学会 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン(2014年最新版)準拠が前提)
当院では痔の治療法選択にあたっては患者さんとの十分なコミュニケーションの上、患者さん自身の「治療目標」が最優先になるように決定します。
内痔核・外痔核を治療する方法としては
- 薬のみによる治療
- 注射による硬化治療
- 焼灼術
- 結紮術
- 根治術
- PPH法による根治術
に大別されます。
当院では上記の治療法を適宜組み合わせて良好な結果を得ています。
切らない痔の治療
厳密に切らずに…というのは薬のみの治療かもしれませんが、ここでは薬を用いた治療以外にも、痛みの少ない切らない(大きな傷をつけない)手術について解説します。
薬のみによる治療
内服薬や軟膏・座薬による治療になります。痔の大きな原因である便秘や下痢などの排便異常をケアしつつ、痔核そのものの治療を注入軟膏、坐薬、内服薬などを用いて治療していきます。
ジオン注射による硬化治療(ALTA硬化療法)
これは10年ほど前から盛んに行われるようになった治療法です。ジオン(ALTA)という注射薬を痔核に直接注入し、組織と反応させることで痔核を縮小・硬化させる治療法です。以前から硬化療法という治療法自体はあったのですが、治療効果の永続性という点で不十分でした。
10年ほど前にALTA(ジオン注)(ジオンは劇薬であるため、特定の研修を終えた医師のみが施術することができます)という薬剤が使用可能になり、この薬剤による硬化療法がスタンダード治療のひとつとなりました。硬化剤(ジオン)は痔の周辺4か所に注入するのが標準ですが(4段階硬化療法)、治療に慣れた医師は独自の注入配分があります。
焼灼術
レーザーやその他の凝固切開装置、あるいは薬剤を用いて痔核組織を焼きつぶして蒸散させる方法です。痔核をつぶしてしまうので、即効性があり簡単な方法ですが、痔核表面にも傷がつくため相応の疼痛があり、再発しやすい方法です。
痔核結紮術
痔核を根部で結紮して痔核組織を壊死に誘導します。極めて簡単な方法で、痔核も速やかに消滅する即効性のある方法ですが、結紮部位によっては疼痛もあり、単独では再発しやすい方法です。
痔の日帰り手術
切らずに治せればそれに越したことはありませんが、脱肛の高度なものや頻回再発例をキチンと治療するには、多少は切る手術も必要です。そうした場合の日帰り手術の実際について解説していきます。
いまだに多くの病院で入院してから手術がおこなわれていますが、痔の手術に関して言えば入院の必要はないと考えられます。痔の手術について、入院手術と日帰り手術を比較します。
日帰り手術 | 入院手術 | |
---|---|---|
費用 | 1~3万円(保険診療の場合) 保険診療であれば施設間の差はほぼない |
7万円~20万円程度(保険診療の場合)+ベッド代 50万円~100万円以上(自費診療の場合) 施設によりベッド代・自費などで大差あり |
治るまでの日数 | 同じ | 同じ |
術後の痛み | 同じ | 同じ |
麻酔方法 | 局所麻酔、静脈麻酔、硬膜外麻酔まで | 全身麻酔、脊椎麻酔、すべて可能 |
術中の痛み | ほぼ無いが痛むこともある | ほぼ無いが痛むこともある、全身麻酔なら無痛 |
術後の生活自由度 | 自宅で過ごすため自由度大 | 入院下のため自由度小 |
緊急時対応 | 緊急時には医師に相談可能 (当院の場合) |
随時対応可能 |
術後の自由度、治療費用など多くの点で日帰り手術が優れた方法であると分かります。
日帰り手術をより快適にするアプローチとして、手術方法そのものの工夫が挙げられます。症例ごとにカスタマイズされた手術方法は、痛みも最小限で最大の治療効果が期待できます。「切らない」手術方法に加えて、痔核の高度な症例に対しては以下の根治手術を組み合わせてしっかりと治療します。
痔核根治術
痔核を粘膜ごと切り取り、切った粘膜を縫合閉鎖していく方法です。同時に痔核の原因ともいえる痔動脈等の血管処理もしています。
Milligan-Morgan法による根治手術が原法ですが、当院ではこれを改良して、疼痛が少なく根治性の高い手法を施行しています。再発は現在まで認めません。術後の合併症(出血、再発、感染等)も当院ではほぼゼロです。保存的に止血剤等で済む術後出血が2例(2016年3月時点)のみです。(頻度0.03%以下)
参考までにPPH法について触れます。当院ではPPH法は施行しておりません。負担の重いPPH法を選択する必然性がないからです。
PPH法
ヨーロッパ発の治療法です。痔核の発生しうる直腸粘膜を一括切除する手術器械を用いる方法なのですが、万一、直腸粘膜の吻合部がくっつかなかった場合は縫合不全という重篤な合併症となります。また手術後一時的に肛門周囲の浮腫が強く表れることもあり、負担がかなり大きな手術といえます(手術時に使用する自動吻合器という器械も高額で、手術費用も高額になります)。
PPH法で用いる自動吻合器。
これを直腸内に挿入し粘膜切除と縫合を同時に行います。
痛みが少なく、美しく治す工夫
ただ痔が治ればいいというのではなく、少しでも低侵襲な(体への負担が少ない)治療、また仕上がりの美しい治療を当院では目指しています。 陰部である肛門ではありますが、ビラビラが残ったり腫れぼったいままの肛門では、いくら痔が治ったとはいえ最高の治療とは言えません。
安全性の確保、機能面の改善は当然であり、さらに整容性(見た目の美しさ)にこだわってこその最良の治療と当院では考えます。他院で手術を受けた後の醜い傷跡の修復も行っています。汚い手術跡が気になる方は一度ご相談ください。
当院の実績・症例実例
症例1(痔核硬化療法のみ)
本症例は80代女性です。リスクの少ない痔の硬化療法は高齢者でも安全に受けることができます。
症例2(痔核硬化療法のみ)
本症例は30代出産後女性です。乳幼児のおられる多忙な若いお母さんでも、痔の硬化療法は比較的短期間で治療効果が得られます。
症例3(痔核硬化療法のみ)
本症例は40代男性です。営業職の方で、一日のかなりの時間を自動車で移動されます。仕事が忙しく術後安静が保てない患者さんにも、痔核硬化療法単独なら施行することができます。
症例4(痔核硬化療法のみ)
このような巨大痔核でも硬化剤の注入方法を工夫すればスッキリと治ります。ただし薬剤の使用量が多くなるため、適切に注入しないと発熱や臓器損傷などを招く場合があり、注意が必要です。
症例5(痔核結紮術)
技術的に容易な痔核結紮術で、一時的に内痔核は十分治療されます。ただし本法単独では痔核再発を起こしやすいため、当院では再発しにくくなるような手技を加えて工夫しています。
症例6(痔核根治手術)
内痔核だけでなく外痔核もある複合タイプの痔核の場合、どうしても硬化療法や結紮術だけではきれいに治せない場合があります。そうしたケースでは痔核根治術をご提案する場合があります。
症例7(痔核根治手術)
痔核根治術は他の治療法より侵襲が大きく術後の疼痛も強いことが難点ですが、治療の確実性・永続性では優れており、当クリニックでは切除部位を最小限にとどめつつ、結紮術等の低侵襲手技を組み合わせて、最少の苦痛で最大の成果をあげるような手術を行っています。
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