乳がん検診は毎年受ける方がいいですか?
乳がん検診は早期発見が目的ですから、最低限2年に1回、できれば1年に一度は検診を受けた方が良いと思われます。特に40代では乳がんが好発するにも関わらず、マンモグラフィ検査単独では見落とされることが近年の調査結果で明らかになっており、当院ではできる限り超音波検査を行うべきと考えています。
乳腺症だと乳がんになりやすいのでしょうか?
基本的に乳腺症というのは生理的な乳腺の変化で、ほとんどの場合は乳がんとは関係ありません。ところが乳腺症の胸というのは、しこりがゴロゴロあるように感じられ、乳がんと紛らわしいことがあります。また全体的に乳腺が固くなりがちで、触診だけでは異常がわかりづらいこともあります。こうした方は特に定期的なマンモグラフィーや超音波検査などの画像診断による乳がん検診を受ける方が良いでしょう。
生理中は乳がん検診は受けられますか?また授乳中は検診できますか?
生理前や生理中の乳腺が大きく張った状態はあまり検診には適した状態とは言えません。
マンモグラフィ検査では、乳腺を圧迫して平べったく伸ばします。生理中だとその際に余分な痛みを感じることになります。授乳中の場合も乳腺が大きく発達しており、検査時は痛みも強く乳汁があふれることになります。いずれの場合も検診はできますが、できれば他の時期に受けたほうがいいでしょう。
ただし、明らかに異常を感じるときは直ちに受診されるべきです。超音波検査などマンモグラフィー以外の適切な検査を選択して診察いたします。
検診ではマンモグラフィーと超音波エコー検査のどちらがいいの?
日本では現在、乳がん検診はマンモグラフィー検査(乳房エックス線)が基本とされていて、40歳以上の女性に2年に1回受けることを推奨し、神戸市をはじめ地方自治体が公費助成をしています。乳がんを検査する有効な方法として超音波エコー検査もありますが、適切な検診とは何なのでしょうか。
米国では以前は米国がん協会(ACS)が毎年のマンモグラフィー検査による乳がん検診を推奨していましたが、その推奨年齢を40歳から45歳に引き上げるよう勧告しました(2009年11月)。つまり50歳未満の若年層女性が乳がんから身を守る上でマンモグラフィーはほとんど効果がなく、勧められないという訳です。不必要な放射線照射や組織検査を受けるリスクを減らすことが目的ではあったのですが、米国内でも大きな議論を呼びました。
わが国では40歳代の女性を対象にした乳がん検診の大規模(76,000人以上対象)臨床試験で次の結果が得られました。
『マンモグラフィ(乳房エックス線)検査に超音波(エコー)検査を併用すると、マンモグラフィのみのがん発見率は0.32%(117人)だったのに対し、超音波の併用では0.5%(184人)に上昇した。がんを正しく判定できる感度は、マンモグラフィのみで77.0%だったが、超音波も受けると91.1%に上がった。発見したがんの進行度を比べると、超音波では早期の「ステージ0」「ステージ1」の割合が高かった。』
つまり超音波検査を併用したほうが乳がん発見率が1.5倍に上昇したのです。
(2015年11月世界五大医学誌Lancet誌上にて発表)
マンモグラフィー検査と超音波検査の特徴を整理してみましょう。
マンモグラフィー検査 | 超音波エコー検査 |
---|---|
50歳以上での有効性は証明済、しかし(若年)高濃度乳腺では精度が低い | 高濃度乳房でも精度が落ちない |
微細石灰化も検出できる | 小さな石灰化は検出できない |
放射線被ばくする | 人体に無害 |
妊娠中やインプラント豊胸術後には受けられない | いつでも、どんな人でも受けられる |
検査精度のばらつきが少ない | 検査施行者による精度のばらつきが大きい |
まとめると、乳房の脂肪割合が少ない高濃度乳腺の人は超音波検査が特に有益で、脂肪性の巨大な乳房の人はマンモグラフィー検査が向いていると思われます。
がん検診のありかたについての議論
厚生労働省が国家的プロジェクトとして行うJ-START(ジェイ・スタート)
J-STARTでは超音波検査を併用する検診と併用しない検診(マンモグラフィのみ)の比較試験を実施し、超音波検査が有効かどうかを検証しています。
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