直腸粘膜脱
直腸粘膜脱とは、直腸の内張りをしている粘膜がたるんで肛門の外に脱出した状態を言います。痔と間違えて来院する方がおられますが、痔と違って症状が軽いのが特徴です。
原因
過剰な排便時のいきみが大きな原因です。すなわち便秘は大きな原因です。何度も、強くいきむことで、直腸粘膜が外へ外へずれてくる状態です。組織の丈夫な若い人はなりにくく、高齢の方に多い疾患です。
症状
肛門から直腸粘膜の一部が出ていることもあるので、下着に粘液が付着したり、出血があったりします。痛みはなかったり、あっても非常に軽微です。肛門の不快感などもみられます。
治療
まず排便異常を改善させることが必要です。そのうえで過剰にいきむような排便習慣を矯正します。すでに脱出癖のついた直腸粘膜部分については内痔核の治療に準じた治療を行います。
肛門ポリープ
肛門ポリープとは肛門内、歯状縁付近にできる線維化した有茎組織の総称です。エノキダケの先のような形状です。
原因
慢性裂肛による線維化組織の増大がもっとも大きな原因です。繰り返す裂肛では、傷の内側と外側にそれぞれコブ状の硬い組織徐々に大きくなってきます。それぞれ肛門ポリープ、見張りイボ、といいます。人間の体は反復するダメージを受けると、その部分が防御的に硬くなるためこういった現象が見られます。また裂肛でなく痔核でも同じ場所に強い物理的ストレスが加わった場合に肛門ポリープを形成します。
症状
ポリープは、その原因によって症状が様々ですが、ポリープそのものからの痛みや出血はありません。あくまでポリープは原疾患の副産物だという事です。ただしポリープが大きくなってくると、肛門に挟まった感じになったり、肛門から出てきて不快な感じがしたりします。
治療
裂肛など、原疾患の治療が優先されます。しかし脱出症状による違和感が強い場合はポリープを切除することになります。ポリープの切除は小さな痔核の切除と同等の安全な手術です。
直腸瘤(直腸膣壁弛緩症・レクシトール)
直腸瘤は高齢の女性でしばしばみられるものですが、排便時にいきんでも、力が直腸に加わらずに膣側に逃げてしまうことをいいます。女性の場合、直腸の前方に膣があります。高齢になると、膣や直腸周囲を固定する結合組織が脆弱化するために、排便時にいきんで力をかけても直腸ごと膣側に逃げてしまってうまく排便できないのです。
原因
加齢に伴う骨盤内結合組織の脆弱化です。排便時にいきんでかけた力が下方に伝わらず、前方にずれて働いてしまい、便を入れたまま直腸が前方の膣側にずれてしまうことが病気の成因です。
症状
便意があって、便がそこまで来ているのに、いくらいきんでもうまく排便できなくなります。下腹部を手で強く圧迫しながらいきんでみると上手く排便できることがあります。
治療
高齢女性が治療対象になることが多く、できるだけ薬で排便をコントロールすることが望ましいです。しかしながら、どうしても力学的に排便のための圧が直腸にかからない場合には、直腸と膣の間の結合織を補強するために人工の膜を固定する手術などを行う場合があります。
肛門がん
肛門がんとは、肛門の狭くなった部分である肛門管周囲に発生するがんを指します。肛門周囲の組織は、粘膜や皮膚、筋肉組織など様々な由来の細胞から成り立っており、そのいずれから発生したがんなのかで予後は大きく変わります。
原因
痔ろうなどの慢性炎症性疾患があると発がんしやすくなるのは医学的によく知られています。またパピローマウイルスなどの感染症が原因のがんも一部にあることが知られていますが、明らかな発がん原因が不明のものも多くあります。
症状
がんとは悪性腫瘍ですので、何らかの腫瘍成分、つまりできものがあります。盛り上がったようなできものもありますが、皮膚だただれたような腫瘍もあるので注意が必要です。一般の方では診断が困難であると思われますので、何らかの異常が継続する場合は速やかに診察をお受けいただくようお勧めします。黒子のようなものや、あざのように見えるだけのものもあります。進行性の病気ですので、腫瘍が大きくなってくると出血や痛み、便が細くなるなどの症状も見られます。
治療
原発組織によって治療法は異なります。手術、抗がん剤、放射線治療などを組み合わせますが、腺がん、扁平上皮癌など、どういった組織から発生したがんか?という事で治療法は変わります。またがんの進行度によっても選択できる治療は変わってきます。
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